0.設定
爆豪と幼馴染。普通科に通うお嬢様。事件に巻き込まれたせいで身体が弱い。母は元プロヒーローで現在はヒーロー番組の解説などで活躍中。父は個性を生かしてメディア界で活躍。メディア王と呼ばれる。個性はあるが、自分の個性は足の小指の関節が二つあること…
01. かよわいあの子の月曜日
朝の通勤時間帯の電車ってこんなに混んでるんだ。満員電車はすし詰めで、周囲からぎゅうぎゅう押される。カーブに差し掛かれば体勢を崩しちゃうし、立ってるだけでも超大変だ。みんなこれに耐えてるなんてすごい。自分がこれから耐えられるのかな。今日は入学…
02. キミが僕をヒーローにした
は幼馴染だ。小学校入学前に、当時は現役のプロヒーローであるの母が参加するボランティアにがいた。母に頼み込んで自分も参加した。当然デクも来ていた。は近所に住んでいて、同じ音楽教室に通っていると知った。時間が違っていて会うことはなかったけど、発…
03. ブレザー服と散弾銃
朝、駅のホームでかっちゃんと待ち合わせをして、学校に行く。電車の中でバランスを崩した時は支えてくれるし、昨日とはがらりと変わってなんか優しい。いや多分かっちゃんは元々優しいんだ。昨日は優しさより先にきたものがあっただけで。「心配してくれてあ…
04. 心臓はあまりに凍えていた
放課後もかっちゃんと一緒に帰ることになってる。かっちゃんが強引に取り付けた約束だ。A組はまだ終わっていないようで、校門で待っていると名前を呼ばれた。「さん! 久しぶり!」久しぶりってことは、知り合いってことだ。声をかけてきたのは男の子だから…
05. お隣さまひとり
「は!? 爆豪彼女いんの!?!?」校門付近で今日も待ち合わせをして、かっちゃんが来たからさぁ帰ろう、と少しだけ歩いたときだった。後ろから大きな声をかけられた。かっちゃんは明らかに嫌そうな顔をして不機嫌な声を出した。「うるせー! 大声で喋るな…
06. 空きっ腹にハニーパンチ
テレビでは取材を受けた生徒のインタビューが流れたり、学校の外観を背景にレポーターがオールマイトの経歴を紹介していた。肝心のオールマイトは映っていない。どのメディアも学校にいるオールマイトを撮りたいようだ。父に相談してからもマスコミの勢いは止…
07. 瞳に猛毒を孕んだあの子
目が覚めると、私はベッドに横たわっていた。消毒液の匂いがする。ここは保健室だろう。窓から射し込む光は赤くて、夕方だと知った。結局午後の授業をサボってしまった。白くて清潔な枕から頭を浮かす。上半身を起こすと、少し辛くてまた横になりたくなる。ベ…
08. 真綿に包まれても青痣は残るね
画面の上から下までの不在着信はかっちゃんからで、留守番電話サービスには大量の音声メッセージが吹き込まれていた。ラインを開けば、やっぱり大量のメッセージが来ていて、開いた瞬間に既読になっただろう。すると『どうした?』と短文が送られた。「ごめん…
09. 自惚れをあおる仕草
かっちゃんはやっぱり優しい。私がなるべく気を遣わないように、無理しないように、かっちゃんがさしだした優しさを断りにくいように仕掛ける。ある意味ズルい。これで荒々しい言葉遣いをしなかったらお手本のようなヒーローだ。そうしたらクラスメイトともす…
10. どうぞ遠慮なく見限って
やばいやばいやばい猛烈にやばい。高校に入ってからかっちゃんのお世話になりっぱなし頼りっぱなしだ。中学では何とかなってたけど、体力が落ちたせいで日常生活を送るのも以前より難易度が高くなった。菓子折りやらお礼の手紙を準備しながらそう思った。春の…
11. わたしの心をきみは知らないでいて
心操くんが私を洗脳して、体育の時間は普段より動けた。運動能力がクラスで最下位なのは変わりないけど。洗脳が解除された瞬間、身体中が痛くて歩けなくなった。普段使わない筋肉を使ったせいだとリカバリーガールに言われて、心操くんが私に謝った。謝らなく…
12. 生まれた悪感情に蓋をする日々
「失礼します」昼休みに保健室で横になっていると、扉が開いて、緑谷くんが入ってきた。彼は大怪我もするけど、リカバリーガールのお世話になれるだけの体力がある。そしてリカバリーガールにめっちゃ怒られてる。緑谷くんはビクビクしながら、周囲を見回す。…
13. モブでも知り合いでもなく特別な人
体育祭を二週間後に控えた日、ホームルームで体育祭の概要が説明された。学年別総当たり戦と、レクリエーションに分かれていて、学年別総当たり戦はヒーロー科に合わせているらしい。噂ではヒーロー科の入試は色んなロボットがいて倒したりするとポイントがつ…
14. 触れぬが花
体育祭までの二週間の放課後は私がかっちゃんの教室に行くことになった。しばらくは人の波が途絶えないだろうというのと、ヒーロー科の方が終わるのが遅いからだ。体育はレクリエーションの種目の練習ということで、少しは辛くなくなったけど、やっぱりしんど…
15. やっぱりビビっちゃった
二週間などあっという間に過ぎるもので、保護者向けのパンフレットが渡され、服装規定やら生徒向けプログラムやらを渡され、今は大きなスタジアムの控え室にいる。あと数十分で体育祭が始まる。かつてのオリンピックと同等の人気を誇るそれは、大量のスポンサ…
16.凡人が怪我しないって大変
一年生が参加するのは障害物競走だ。第一種目だから開会式のすぐ後に始まる。ちなみに担任の先生からは個人的に「ゴールしなくても罰せられない」という忠告をもらった。体育の先生からはスタート地点にいれば欠席扱いにはならないと言われた。私にだけ忠告が…
17. 周囲との乖離
障害物競走の上位何人かが次の競技に進めるシステム。嬉しいことに私は参加しなくていい。地雷を平気で設置されていて、それを切り抜けた人のための競技なんて真っ平御免だ。かっちゃんはなんと三位だった。啖呵切るだけあるな、と感心した。あと、客観的に見…