うるせぇ売春って言え

制服のまま繁華街の植え込みに腰掛けて足を組む。携帯を取り出してケータイ用サイトにアクセス。いかにも暇してますってオーラを出してると男が何人か声をかけてくる。
今日1番に声をかけてきたのは3人組の男性。チャラそう。多分ナンパでハズレ。
「キミ、一人?」
「そうだけど」
「お兄さんたちと一緒に遊ばない?」
「まとめてでいいや。一時間こんだけ用意できるならいいよ」
パッと手を開いて手をパーにする。
「5千円? 高っ」
「5万だけど」
「ブスに金出すと思ってんのかよ。タダだから声かけてやったのに」
「じゃーーね」
ヒラヒラ手を振って駅ビルに入る。あの男たちがいるうちは戻れないな。
お気に入りの雑貨屋で新入荷の化粧品を眺める。綺麗なラメ、つやつやのリップグロス。どれもお金がないと買えないものたち。
「苗字」
「わっ、ココ」
「何してる」
「何って? 化粧品見てたの〜」
雑貨屋でカラフルなリップのテスターのキャップを開けた。
「危ないことするなよ」
「ココだってしてるじゃん?」
「お前とは違う」
「私はココと違ってこの年齢だから稼げるのよね」
「名前!! だから男漁りなんてやめろって!」
「タダで付き合うなんてしませんー。ちゃんと売春って言おうよ、ココ」
ココは黙ってしまう。手当て? プレゼント目的? 美人局? 何でもいいけど私と一緒にいる時間にお金とか対価とか払ってくれる人たちをお客さんにしてるだけ。
「それともココが買ってくれるの? でもそれって意味ないよね。私たち、二人ともお金が欲しいんだもんね」
「ね?」と首を傾けてちょっと口角を上げる。この笑顔はココが1番嫌って、1番客にウケがいい。
客と言っても春を買う最悪の犯罪者だけど。
「もっと安全に稼ごうぜ……な……」
ココは今にも泣きそうな顔で私の袖を掴む。
服の袖から覗くブレスレットも、私が使ってる化粧品も全部客からのプレゼントかお金で買ったものだ。安全に沢山稼げるなら苦労しない。
ココだってわかってるくせに。そんなこと言う。
「私こと心配してるのか好きなのかハッキリしてよ。心配ならいらぬお節介だよ」
ココと違って私は貯金なんてしないし、いつ死んでもいいと思ってる。大金を稼いだらその日のうちに使っちゃう。将来の心配なんてない。
未来なんてないんだから。今が楽しくありたい。それだけ。
「名前のこと、好きだから……こんなことしてほしくない……」
「言わせてごめんね?」
生きるにはお金が必要で私たちは危険な橋を渡っていることに変わりない。
「私もココが好きだから、関わらない方がいいよ」