後輩ちゃん

「おい後輩〜! ジュース買ってこい」
嫌でーす、と拒絶を全面に顔を歪ませてからにっこりと笑顔を作った。
「私のこと好きだからそんなことしちゃうんですよね!」
「は?ばかじゃねーの」
「好きじゃないんだったら……そんなことしないよね? 五条先輩は」
「チッ……」

サングラスで目元が隠されても眉間の皺は丸見えだった。片足はまるで地団駄を踏むように落ち着きがないし苛立ってるのが顔だけではなく全身で表現されていた。

「またやってる」
「小学生かよ」
遠くで見守っている硝子先輩と夏油先輩は私を助ける素振りなどせずついでに自分達の分まで買いに行かせるつもりだった。

パシリ失敗。五条の頭の中にはそう浮かんでいることだろう。
五条先輩のことは分からない。私は愛されている方で、お気に入りの位置にいるのだと思う。

「名前ちゃんって悟の扱い上手いよね」
「今度逆にパシってみてよ」
「硝子先輩、それはちょっと……」

五条先輩は小学生みたいで先輩だけど可愛いなって思ってしまう。手の焼ける先輩ぶりたいひと。好きって言葉に敏感でそんなことねーしってぶつぶつ言ってる姿も可愛い。

「五条先輩、好きな子は大切にしなきゃですよ」
「お前のこと嫌いだからジュース買ってこい」
「またまた〜]。デートならいいですよ。一緒に買いに行きましょう」

ムキになった五条先輩が私の手を握る。ニヤリと笑った顔にイタズラ成功って書いてありそう。

「デートだったら手を繋がなきゃなぁ」
「本当に先輩って……私のこと好きだなぁ」
「デートって言ったの名前だから」
「はいはい」

ジュースなんてパシらず自分で買いに行けばいいのに。後輩をパシらせてみたい、なんて思っているのだろうか。
私はそんな五条先輩がもっと扱いやすくなればいいのになんて思っている。
いつかは一人でおつかいに行けるようになるといいね、先輩?